九龍に住民票を置きたい。みかるくです。
今回も特に中身のないシナリオ感想文。
外伝、在りし日の残照とか常羽・曲の幕間とか色々とネタバレです。未プレイの方はご注意ください。
バドエン確定の幕開け
約束された滅亡。
もうわかってましたよね。タイトルからして「在りし日」ですもんね。
これまで公開されてきたシナリオで、九龍商会は黄金時代に東アジアで繁栄した一大組織との説明もありました。
黄金時代って、我々パニグレ民に言わせれば滅びの代名詞です。
その上、九龍を主題としたストーリーときたら、そりゃもう「破滅」の一言だろうと。
シェイクスピアも咽び泣く滅亡確定シナリオに決まってるだろう! と。
カタルシス大好きプレイヤーとして、期待に胸を膨らませつつプレイしました。
シナリオを最後まで読むと意味がわかるムービー。
まず結論だけ書くと、めちゃくちゃよかった。
今までのシナリオでは、「黄金時代」ってあくまでも過ぎ去った歴史の痕跡としての描かれ方が多かった気がするんですが。
在りし日の残照は、断片的ながら当時の地上の様子を追体験できる回想編でした。
言わば、全てのメインシナリオである「反撃時代」の前日譚。おもしろくない訳がない。
ポストアポカリプスって壊滅後の世界描写も大本命ですが。そこに至る前の人類文明の繁栄や、終わりゆく世界に抗う人々の輝きもまた醍醐味だと思うんですよね。
(同じ理由でナナミ・狂風の幕間も大好きです!)
今回の外伝、見たかったものが見られました。
そして、立場の違うキャラクターそれぞれの視点から三者三様のシナリオを追う構成のためか、話に奥行きを感じました。
九龍環城とかサンドワールプールも多視点がリンクし合う群像劇だったんですが。今回の章は、シンプルな1本道で個々の時間軸がわかりやすかったですね。
それだけに没入感があった。好きな系統のシナリオだったなぁ。
平民の戦い
まずは九龍古都で劇場の所属員だった、常羽視点。
開幕早々「空中庭園の目を盗む」とか言ってましたね。何なの? またなの?
秘密の多いゲーム、パニグレ。焦らしプレイに次ぐ焦らしプレイです。
イベント期間がまったりと長めな所為もあるかもしれませんが、そろそろ九龍とアディレと昇格者と空中庭園と421(キャスト多過ぎ)の互助関係やら裏取引の内訳やらを教えてほしい気がする。
というか、そろそろ教えてくれないと私の記憶がリセットされてしまう。
詳細はいずれ全部明らかになると信じています。
私がニワトリ頭過ぎて理解できてないだけ……なんてことはないはず。多分。
とにかく、九龍夜航船のヴィリアーの統治で枷によって記憶を失っていたらしいADL-17(常羽)は、何者かのデータ提供で過去を振り返ります。
人間時代の常羽が所属していた劇場は経営難だった。
常羽はアジール号に行っても、一部の貴族から「平民風情が~!」みたいな扱いを受けてましたが、人間時代の育ちもハードモードだったんですね。
パニシング爆誕以前の九龍商会は、ユニバーサルトイ社との協力関係で、ロボットとバイオニックを普及させたらしい。
こうした技術力が台頭してきたことで、常羽達のように人の手による劇や仕事は衰退しつつあったっぽい。
ところで、ユニバーサルトイ社のロボットってヴィラが喜ぶプレゼントである「ロボット軍用犬」とか、辰星スタジオリゾートでお目見えしたMr.ハクのイメージが強いので。
コスモス重工業よりも、マスコット的な愛玩系デザインが多い気がします。
その点に関しては、常羽も負けてませんでした。
パニグレ史上初、ショタ系実装キャラとしてのポテンシャルを遺憾なく発揮。
隠れて豚の煮付け食ってて、こんなに絵になる人がいるだろうか。
これでCVが今を輝く炭治郎 花江夏樹さんなんだから、無敵と言わざるを得ない。
等身大の終末期
話の内容をシンプルに言ってしまえば、劇場は立ち行かないわ、機械の廃棄で治安悪化するわ、チンピラには絡まれるわ、最終的に侵蝕体が押し寄せるわで……
年端も行かぬ少年が、世界の奔流に呑まれていく悲劇なんですけど。
常羽は平民以前に子供であることも相まってか、何やら最近の兵隊さんは忙しそうにしているな? 何だかわからないけど大型機械を規制しているらしいな? 程度の曖昧な視点のまま話が進む。
この妙なリアリティが怖い。
「王様がご高説垂れてたけど、そんなことより今の生活を何とかしてくれ」
という等身大の民衆視点で黄金時代末期が描かれていて、常羽主体のシナリオには臨場感を覚えました。
この先、地球がどうなってしまうか知っているプレイヤー目線でこれを読むのはじわじわとした絶望があります。いい演出です。
特に世界政府の報道と民衆の反応には、変に既視感が。
そうだよなぁ、いつか制限は解除されるはずって思いますよね。ウィズパニシング……。
そんなこんなで。常羽を始めとする劇場の面々は、パニシングの爆誕以前からロボットに職を圧迫され、最終的にはロボットによって命の危険にまで晒されることになります。
言わば時代の被害者。
それだけに、クライマックスの演舞シーンは力強い印象深さがありました。
血のクライマックス
侵蝕体が襲い来る中、逃げ惑う人々の混沌を治めるように演目を執り行う常羽達。
負傷しようが何だろうが、血をまき散らしながら歌い踊る。
シンプルに狂気の沙汰。
だがそれがいい。
火事場の馬鹿力とは、恐らく、人間のみが至れる精神の極致なのです。
この狂気にも等しい泥臭い不合理性こそが、ロボットには再現し得ない人間の強さなのである。
これは人類が持ち得る魂と血潮の咆哮が、機械仕掛けの脅威に打ち勝った瞬間なのである!
有無言わせぬ表現力に圧倒されるシーンでした。力こそパワー。
あと、映画タイタニックに登場する実在の音楽家ウォレス・ハートリーとその音楽隊を彷彿とさせるようで、個人的にはすごく興奮した。
(乗客が落ち着いて救命艇へ乗れるよう沈み行く船中で演奏を続けた、との逸話がある)
そして、常羽達の血しぶきの演目や、果敢に抗戦する九龍衆に触発されたかのように、民衆もまた黙って殺されるばかりではなかった。
九龍の民、強過ぎか?
正直、なす術もなく虐殺されていく人類の歴史を辿る話になるんじゃないか……と覚悟していたので、転んでもただでは起きない九龍の人々の底力にはやられた。
これが九龍の意思だ。惚れました。
その後、常羽は劇場の仲間を殺した侵蝕体に襲われて重症に。船に運ばれて古都を離れることになります。
この船というのが、恐らくは11章で登場した九龍夜航船で。後に華胥のコピーを用いたヴィリアーによって、激やばディストピアと化していったのかな?
常羽が船からどのような経緯を経てアディレ商業連盟に渡るかは、幕間で綴られる訳ですが……
小柄な見た目に反して、ハチャメチャ波乱万丈の常羽。
初登場はソフィアや真理ビアンカを主役とするシナリオだったので、どっちかっていうと、お姫様ポジションのイメージが強かった。
今回公開された幕間と外伝では、力強く靭やかなキャラクター性を感じられました。
よかった。荒んだ世を渡る腹黒気質と、少年的な瑞々しさの同居がとてもよかった。
……で、お迎えしたかって?
あたぼうよ!(σ’∀’)σ
(何だろうこのポーズ)
王の戦い
続いて九龍の統治者たる曲様と、戦役者視点。
我等が王。我等が大本命。
常羽の視点は、どこかで得体の知れない災害が起こり、ほとんど訳もわからず脅威に巻き込まれていく民衆の様子でしたが。
曲を始めとする統治者(戦役者)サイドでは、世界を取り巻く深刻な状況や刻一刻と追い詰められていく九龍の立場が明示されており、そのとき何が起こっていたのか? という俯瞰的な解像度が高かったですね。
世界政府の実験失敗に関しても、初期段階から対外的な報道よりも差し迫った状況らしいことが示唆されていた。
九龍古都はパニシングの報せに伴い、人々が屋内に引き篭もったり、避難民が続出することでゴーストタウン化。
大型機械の廃絶も相まってか暴徒の略奪が横行したり……とほとんど恐慌状態に陥った。
やたらとチンピラとストリートファイトしてた常羽も、こういう治安悪化に巻き込まれてたんだろうなぁ。
試される大地、九龍。
迫り来る侵蝕体の脅威を前に、このまま錯乱に呑まれてしまうのかと思いきや、王の言葉が人々をひとつに束ねる。
演者としての才覚
帝王、曲様のお言葉である。
ここでボイスが入る演出には本当に痺れました。フルボイス仕様ではないゲームだからこそ、こういう緩急が堪らないのです。
厳かなクライマックスシーンだった。
何がすごいって、世界政府の報道を受けて機械の廃棄を進めてきた九龍に、これからその機械が攻め入ってくるだろう状況下なんですよね。
こんな瀬戸際で説明される「華胥(機械)の計画に則り、肉体を捨てましょう」とかいう万世銘の概要……
ほとんど常軌を逸している。
これがパニック映画だったら、その辺の老人は天に祈り出すし、ヤケになった聴衆からは軽く自殺者が出る場面。
しかし、曲様はこの状況を悠然と公表。
犠牲は覚悟の上! 来る侵蝕体との戦いをも、九龍の矜持を以て勝利できるのである! と。
正直言って明確な根拠とかはなさそうなんですが、死と滅亡を目前に控えようとも、大衆を牽引する王としての人物像を完璧にこなしている。
表向きの声明が全てではないことも、統率者然としていて最高だったんですよ……!
この演説シーン、イデオロギー大好きマンの私にはめちゃくちゃ刺さりました。
私は矢印の辺りにいた(急な妄言)
何なら一緒に「九龍!」って言ってた。
九龍は永遠って義務教育で習ったので。
死なば諸共
生身の身体で侵蝕体と相対する九龍衆。そして、曲様。
万世銘希望者の意識保存や、その他の民衆が船への避難を終えるまで、王自らが前線で身命を賭して戦うんだからすごい。全人類支持率100%。
曲様がピッチングマシーンになったり……
部下との別れがあったり。
幕間をプレイしていると、より一層グッと来る台詞の数々。
胤とヴィリアーは、曲の完璧さに対して恐れや劣等感を秘めていたように見えるんですが。曲もまた、彼等の人間味を得難いものとして捉え、ある種の憧憬をも抱いていたのでしょうか。
曲はどこか人として欠けていたが故に、民衆を統べる者に相応しく、清濁併せ呑む資質を持てたのかもしれないし……
人類のために身を粉にすることで、ようやく人間に仲間入りできるような感覚を得ていたんですね。
パニグレってこういう「人とは何か」「機械とは何か」のテーマ性を感じる話が多いと思うんですが、その中でも曲様の心理描写は心臓に来ました。
毎度毎度ずるいんですよ。こんなん絶対好きになるわ。
民衆の結束
愚民よろしく曲様曲様言っちゃってますが。
九龍の真にクールなところは、民衆がただ権力者に守られるばかりの無辜の民で終わらなかった点だと思います。
民を守るために戦った王を、今度は自ら改造を志願した民が守るという黄金比。
こうして九龍の民は、機械になろうと、見た目が並列化しようと、個々に意思を保ったまま一丸となって戦える九龍の矛となった訳ですね。
これぞまさに「九龍連合体」の真髄……。
九龍の民だったら、亜人型構造体ですら不屈の精神性だけで使いこなせるんじゃないか? とかちらっと考えてしまったシーンでもあります。
北極航路連合は人心掌握術に問題があった
というか、九龍の構造体の外見に関して、まさかシナリオ上でアンサーがもらえるとは想像もしてなかったです。
環城では大変お世話になりました。
その節は、九龍の民って全員ムキムキのおっさんだったのかな、とか内心で疑問に思っててすみませんでした。
画面に圧があり過ぎたんだよ。
とにもかくにも。ここまでのシナリオで、いかにして九龍夜航船や九龍環城へと繋がっていったか……という大まかな流れが垣間見えてかなり満足感がありました。
(ヴィリアーがわざわざ曲様を模していた理由は、はっきりと明かされてませんが)
しかし。この期に及んで、まだシナリオが1つ残っている。
太阿って誰なの?
これ以上、誰の視点から九龍の滅びを追体験しろというの? って感じだったんですよ。
機械の戦い…だと……?
始まった瞬間に思いました。
それをやってしまうのか? って思いました。
イベントムービーで肩を組んでいた仲良し2体……。
もう結果がわかる。
悲しいかな、彼等がこれからどうなってしまうかなんてことは、プレイする前から誰もが予見できたことでしょう。
パニグレ「九龍の地が侵蝕体に滅ぼされることは知っているよね!」
パニグレ「それじゃあ、廃棄されたロボット目線から彼等の一生を追っていこう!」
パニグレに人の心はあるのか?
そもそも人の定義とは?
心の所在とは……?(無我の境地)
終わりゆく世界で出会った、ひとりの少女と2体のロボット。彼等は人類である少女を守るべく最期の瞬間までその使命を全うする。
ロボットものにおける大のド定番を、ここに来てぶち込んでくる破壊力よ。
毎度どうもありがとうございます。
これは大体の人が好きなやつです。カレーライスです。
真面目に書きますが、常羽、曲視点では「人としての生き様がブリキの凶刃に打ち勝つんじゃ~!」という風な人類賛美的な物語性がありました。
対する太阿の一生編では、ロボット目線から見た人類の姿が語られます。
彼等はロボットでありながら、常羽や曲のような人類と同じく、誰かを守ろうとする切実さを抱いていた。
はたして彼等が語っていた心情と人類への思いは、プログラムされたシステムのひとつに過ぎなかったのか?
常羽は演目に伴って英雄の姿を想起し、曲は王として演者に徹することで多くの人を守った訳ですが。
HNB1もまた、最後の瞬間には人類の英雄を思い描き、それを演じようとしていたのかもしれません。
人間賛美でもあり、機械ロマンにも満ちていた3編。
それぞれが主人公として活躍し、総じて読み応えのある外伝シナリオでした。
という訳で、とりあえず作りました。
お前も英雄だ!
シークレットの情報量(暴力)
ここからは後に公開された、在りし日の残照シークレットについて。
短編でありながら情報量が多過ぎて拾い切れないので、ちょろっと触れる程度に留めたい。
曲と華胥の思惑とは?
九龍環城でぶん取った華胥から、曲のメッセージを聞き出したルナ。
彼女は「華胥が敵方に奪われることを想定してなかったんだろう」という見立てを語ってるんですが。
曲様の幕間シークレットを見るに、これも万世銘を成就させる計画の内っぽい感じがする。
曲にとって真の万世銘とは、九龍だけに限らず全人類の意識保存と救済で?
秘密裏に万世銘を進めるため……
そして九龍環城に隠された墓(?)を守るため、目的の相反する昇格者達はもちろん、空中庭園をも欺く必要があった?
だから、九龍環城ではあえて大敗を喫することで、ルナの懐に華胥を潜り込ませたってことで合ってるんでしょうか。
九龍環城で、華胥がガブリエルの接近を曲に報せなかったのも「不意を突かれた」と見せかける芝居だった可能性がある?
華胥が曲の思惑に従って計画的にルナの手に渡ったのであれば、「主人は変わっていない」と言えるのかもしれない……がしかし。
相変わらずの421
話はそれからだ。
華胥を巡る謎について、謎の存在である421と、謎の喫煙者が「謎だな~」と語り合っているという謎のミルクレープ状態。
一応は常羽の幕間シークレットで船から打ち捨てられた槐南を発見したメンツの中に、わざわざ名指しされて「タバコを置いて」とまでテキストにされている、喫煙者キャラがいたんですが。
急に出てきたドーソン。
誰? 誰なの?(恐らくモブ)
しょんぼりおじさんとフラグ回収おじさん
珍しく疲弊した様子だったしょんぼりおじさん、ハセンも気になるし!
ニコラがさらっと持ってきた記録メディアでは、北極航路連合の衝撃の結末が……!
極夜再臨では、やたらと気弱そうだったシュテッセン。
彼は航路連合の暗部を空中庭園に秘匿する手腕もあったんですね。
やっぱりトップを張るだけあって、良くも悪くも組織の利害に則した身の振り方ができる有能おじさんだったのか?
ますます好き! などと思った矢先のことです。
北極航路連合、まさかの壊滅。
シュテッセンは、連合の禍根を全て告解してくれた訳ではなかったらしいですが。組織の存続と人々の安寧を願っていたこと自体は、彼の本音だったようにも見えましたね。
今にして思えば、ナナミと共にどこかに去っていったっぽいバイオニック達とか……
別拠点(新ソフィア)へと移住していった守林人とか……
罪のない存在がまるっと連合の拠点から退去してた時点で、この展開の予兆はあったのかもしれない。
そして、最終的にはワタナベが全部持っていった感。主人公かな。
なんかパニグレのシナリオを総括して振り返ると、苦境に抗わないことや物事を風化させることに対しては、めちゃくちゃ容赦なく鞭打ってくる印象がありますね。
でも、人ってある程度は忘れることで精神衛生を保てるんやで……?
「忘れるほど強くなる」ってルシアも歌ってるし……??
次章もタノシミダナ!
そんな調子で。
シクレを遊び終えた直後は、極夜再臨のシークレットとして公表された方がしっくり来る内容だった? という気もしたんですが。
いや、何のことはない。
ルナに葬られることで、航路連合もまた「在りし日の残照」と化したのである。
タイトル回収がやば過ぎる。
意図してのことか知りませんが、そういうとこだぞパニグレ。
次章も終焉が来るみたいだし、わくわくですね!
おまけ
お顔がそっくりだったふたり。
太阿に守られた少女は、ホロウちゃんの改造前の姿だったのかな?
シナリオに登場した太阿と同様、武蔵も知られざるストーリーがあるのかもしれない。
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